ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約/Hague Convention on International Child Abduction)
ハーグ条約は、16歳未満の子が親の一方に無断で国外へ連れ出されたとき、原則として元の居住国へ戻すための国際的な仕組みです。日本は2014年4月1日から締約国です。NZから日本へ、日本からNZへ子を連れて移るときは、もう一方の親の同意や裁判所の許可が重要になります。
詳細
ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)は、1980年に作られた国際的なルールです。親の一方が、もう一方の親に無断で子を国外へ連れ出したり、国外に留め置いたりしたときに、子を元の居住国へ戻す手続きと、国境を越えた親子の面会交流を支える仕組みを定めています(外務省のハーグ条約のページ)。
日本は2014年1月24日に条約に署名し、2014年4月1日に条約が日本で効力を持ちました(外務省の概要のページ)。
条約が使える場合
外務省のよくある質問では、次のように説明しています。
- 対象は16歳未満の子です。
- 監護の権利(親権など)を侵害して、子が連れ出された・留め置かれた場合が対象です。
- 子が住んでいた国と、連れて行かれた国の両方が締約国である必要があります。親の国籍は関係ありません。
- 連れて行かれた国が締約国でない場合、条約は使えず、その国の法律に従います。
返還されない場合もある
条約では、原則として子を元の居住国に戻します。ただし、外務省は次のような例外を挙げています。
- 連れ去りから1年以上たって申立てがあり、子が新しい環境になじんでいる場合
- 返還すると、子の心や体に重大な危険がある場合
最終的に返すかどうかは、子がいる国の裁判所が判断します。
日本の中央当局(外務省)
日本の中央当局は、外務省領事局ハーグ条約室です。主に次の支援をしています(外務省のハーグ条約のページ)。
| 支援 | 内容 |
|---|---|
| 返還援助 | 子の返還を求める申請を受け付ける |
| 面会交流援助 | 国境を越えた親子の面会交流を支える |
| 裁判外紛争解決(ADR) | 話し合いでの解決を支える機関の紹介 |
| 弁護士の紹介 | 弁護士の情報の提供 |
| 翻訳など | 翻訳の支援、国内外の機関との連絡 |
問い合わせ先は、外務省ハーグ条約室(03-3580-3311、平日9:00〜17:00、12:30〜13:30を除く)です。
NZの中央当局(法務省)
NZでは、法務省(Ministry of Justice)の中央当局(Central Authority)が、ハーグ条約のすべての申請の最初の窓口です。外国の中央当局と連絡を取り合います(法務省のページ)。
NZから外国へ連れ出された子の返還を求められるのは、次の全てに当てはまる場合です。
- 子が16歳未満
- 連れ出される前、子がNZに住んでいた
- 申請する人が、連れ出された時点で子の法律上の後見人(guardian)だった
- 申請する人の同意や裁判所の許可なしに連れ出された・留め置かれた
- 子がいる国がハーグ条約の締約国
中央当局に連絡すると、NZ側で弁護士が付き、相手国の中央当局に出す書類を作ります。相手国でも、その国の中央当局が弁護士を手配します。NZ側の申請に自分で弁護士を頼む必要はありません。問い合わせは、中央当局(04 918 8800、海外からは+64 4 918 8800)にします。
NZに連れて来られた子の返還を求められたら
外国からNZに子を連れて来て、もう一方の親が返還を申し立てた場合、裁判所から書類が届き、回答の期限が知らされます。返さない理由を書いた宣誓供述書(affidavit)と一緒に、防御の届出(Notice of Defence)を出します。その後、相手の反論を経て、裁判官が審理で返還するかどうかを決めます(法務省のページ)。
申立ての手数料はかかりませんが、弁護士費用などがかかることがあります。
NZから子が連れ出されるのを防ぐ
NZでは、子が海外へ行く前に、すべての法律上の後見人と、養育命令(Parenting Order)・後見命令(Guardianship Order)で指定された人の同意が必要です(法務省のページ)。
- 裁判所の命令に反する場合や、裁判が進んでいる間に、裁判所の許可なしに子を国外へ連れ出そうとするのは違法です。3か月以下の拘禁刑か、NZ$2,500以下の罰金、またはその両方の対象になります。
- 子を国外に連れ出すことは誘拐(abduction)とみなされることがあり、7年以下の拘禁刑の対象になります。
家庭裁判所(Family Court)は、子の国外への連れ出しを禁じる命令(Order Preventing Removal)を出せます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| パスポート | 命令が出ると、裁判所から内務省のパスポート担当に連絡され、子のNZのパスポートは新しく発行されません |
| 国境での確認 | 命令だけでは国境の職員に伝わりません。申立てに「Border Alert Request」を付けると、インターポールに送られ、子が国境に来たときに警告が出ます |
| ほかの命令 | パスポートなどの渡航書類の取り上げ、渡航の制限など |
| 期間 | 子が16歳になるか、裁判官が取り消すまで |
申立ての手数料はかかりません(申立てのページ)。弁護士費用などは別にかかることがあります。
手順
子を連れて国境を越える前に
- もう一方の親(法律上の後見人)の同意があるか、裁判所の命令に反していないかを確認する。
- 住んでいる国の法律を確認する。わからないときは弁護士に相談する。
- 同意が得られない場合は、無断で連れ出さず、裁判所の手続きを検討する。
子を連れ出された・連れ出されそうなとき
- NZから連れ出されそうなときは、家庭裁判所に連れ出しを禁じる命令を申し立て、Border Alert Requestも付ける。
- NZから日本など外国へ連れ出されたときは、NZの法務省の中央当局に連絡する。
- 日本に住んでいて、子がNZへ連れ出されたときは、外務省ハーグ条約室に相談する。
費用
2026年10月時点で、NZの家庭裁判所への連れ出しを禁じる命令の申立てと、返還を求められた側の回答に、裁判所の手数料はかかりません。弁護士費用や、費用の負担を命じられる場合があります。NZから外国への返還申請について、相手国での費用は国によって違うため、中央当局に確認してください。
日本との違い・注意点
- 外務省は、条約が適用される場合、もう一方の親の同意なく子を国外へ連れて行くと、原則として子は元の居住国に戻されると注意しています(外務省のページ)。
- 外務省によると、無断で子を国外へ連れ出した親が刑事責任を問われ、元の国に再び入国したときに逮捕された例があります。
- 外務省は、子の国外への連れ出しを防ぎたい親は、パスポートの発給に同意しない旨の申出を旅券の担当窓口に出す方法があると案内しています。
- NZでは、子の海外渡航にすべての法律上の後見人の同意が必要です。日本へ一時帰国するだけでも、同意の有無には注意してください。
- この記事は制度の説明です。個別の状況は、弁護士、外務省ハーグ条約室、またはNZの法務省の中央当局に相談してください。
関連項目
- NZでの結婚と国際結婚(Getting married in New Zealand)
- パスポートの更新・新規申請(Japanese passport application in NZ)
- 大使館・総領事館の手続き(Embassy of Japan / Consulate-General of Japan)
- NZの裁判所の仕組み(New Zealand court system)
- 在留証明・署名証明などの証明書(Certificates issued by the Embassy / Consulate of Japan in NZ)
- NZで家族が亡くなったとき(Death of a Japanese national in NZ)