マオリの芸術(Toi Māori)
マオリの伝統芸術には、彫刻(whakairo)、織物(raranga・whatu)、入れ墨(tā moko)、歌と踊り(kapa haka)などがあります。どれも祖先や部族とのつながりを表すものです。ウェリントンのテ・パパなどで見られ、マオリ文化に関心のある人向けです。
詳細
マオリの芸術はトイ・マオリ(toi Māori、ngā toi Māori)と呼ばれます。ここでは、ニュージーランド政府の百科事典テ・アラ(Te Ara)の解説をもとに、代表的な4つを紹介します。
彫刻(whakairo)
ファカイロ(whakairo)は、木、骨、石、ポウナム(pounamu、ヒスイ)を彫る芸術です(Te Araの彫刻のページ)。
- 木は特にトータラ(tōtara)が使われました。
- 彫像の目にはパウア(pāua)の貝殻がはめ込まれ、高い身分を表す赤い顔料(red ochre)で色を付けました。
- 東海岸の伝説では、海の神タンガロア(Tangaroa)の孫ルアテププケ(Ruatepupuke)が、海の底の家から彫刻を持ち帰ったとされています。
- 彫刻をほどこした集会所(whare whakairo)は、部族の誇り(mana)を示し、祖先の姿を表すものとされています。
- 彫刻の作業には決まりがありました。たとえば、削りくずを吹き飛ばしたり、料理の燃料にしたりしてはいけませんでした。
1926年にはロトルア(Rotorua)にマオリ美術工芸学校(Rotorua School of Māori Arts and Crafts)ができ、多くの集会所を手がけ、彫刻家を育てました。
織物(raranga・whatu)
NZの気候では、マオリの祖先が布づくりに使っていた植物が育ちませんでした。そのため、主にハラケケ(harakeke、NZの亜麻)を使う織物の文化が発達しました(Te Araの織物のページ)。
| 技法・素材 | 内容 |
|---|---|
| ララガ(raranga) | 葉を編む技法。食べ物を入れるかご(rourou)、袋(kete)などをつくる |
| ファトゥ(whatu) | マント(cloak)などの布をつくる技法 |
| ムカ(muka) | ハラケケの葉から手で取り出す繊維 |
| トゥクトゥク(tukutuku) | 糸ではなく葦の格子で編む装飾。主に集会所(wharenui)の内側の壁を飾る |
ハラケケの葉を切るときは、中心の新芽(te rito)を傷つけないようにしました。マオリのことわざでは、ハラケケの株は、弱いものを守って生き延びる人間の家族にたとえられています。
入れ墨(tā moko)
ター・モコ(tā moko)はマオリの入れ墨です(Te Araのター・モコのページ)。
- 伝説では、マタオラ(Mataora)が地下の世界でこの技を学んだとされています。
- 伝統的には、海鳥の骨でつくった「ウヒ(uhi)」というのみで皮膚に溝を刻みました。ほかのポリネシアの入れ墨とは違う、マオリ独自の方法です。渦巻きの模様もマオリ独自のものです。
- 女性のあごの入れ墨はカウアエ(kauae)と呼ばれます。
- モコは、その人の地位と誇り(mana)を表すものでした。
- ヨーロッパ人の入植の時代に衰えましたが、1970年代以降、文化的なアイデンティティを表すものとして再び広まっています。
歌と踊り(kapa haka)
カパ・ハカ(kapa haka)は、列になって並び、歌や詠唱に合わせて踊る集団の芸能です。「カパ」は列に並ぶこと、「ハカ」は踊りを意味します(Te Araのカパ・ハカのページ)。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ワイアタ・ア・リンガ(waiata-ā-ringa) | 手の動きをつけて歌う歌。20世紀初めに生まれた |
| ポイ(poi) | ひもの先に玉をつけた道具を振って、演技を引き立てる |
| ハカ(haka) | 種類が多く、場面ごとに使い分ける。戦いの踊りだけではない |
| モーテアテア(mōteatea) | 伝統的な詠唱や歌 |
| ファカエケ・ファカワーテア(whakaeke / whakawātea) | 入場と退場の演目 |
1972年にロトルアで全国大会が始まりました。2004年からはテ・マタティニ(Te Matatini)という名前になり、2年に1度開かれています。地域大会を勝ち抜いた約40チーム、約2,000人が出場し、3万人以上が観覧する、国内最大のマオリ芸能の祭典です。
作品を見られる場所
ウェリントンの国立博物館テ・パパ(Te Papa)には、マオリの文化を紹介する常設の展示があります(テ・パパの展示のページ)。
| 展示 | 内容 |
|---|---|
| マナ・フェヌア(Mana Whenua) | マオリをこの国の先住民(tangata whenua)として紹介する |
| ヘ・トイ・ファカイロ(He Toi Whakairo) | 7世紀にわたる140点以上の彫刻。4階のマナ・フェヌアの中 |
| ロンゴマラエロア(Rongomaraeroa) | 博物館の中にあるマラエ |
He Toi Whakairoは2026年8月から2031年8月までの展示で、入館料のほかに料金はかかりません(2026年10月時点、テ・パパのページ)。テ・パパの入館料はNZの主な博物館・美術館を見てください。
芸術家への支援
芸術を支援する政府機関クリエイティブ・ニュージーランド(Creative New Zealand)は、優れたマオリの芸術家を表彰するテ・ワカ・トイ賞(Te Waka Toi Awards)を主催してきました。1986年から2020年までに291人の芸術家が表彰されました(Creative NZのページ)。